非点収差法によるオートフォーカス

ピントは撮影前に合わせて撮り始めたらいじりません。でも、下記のような要因でピントはずれるので、実際には撮影を中断してピント調整をすることがあります。

  1. 温度順応が足りなくて後でピントがずれる
  2. 明け方にかけて気温が下がってピントがずれる
  3. フィルタごとにピント位置がわずかにに違う

私が安価なモーターフォーカサーを買ったのは、そんなピント調整を自室から行うことで、少しでも中断時間を短くしたいからでした。でも本当は撮影を中断せずにオートフォーカスができないかなぁ、とずっと思っていました。ちなみに、私が使っているのはOrion USA AccuFocus、FCUSB、ForcusPalです。

撮影中のピント合わせについて調べてみると、温度とピント位置の関係を記録しておいて、「いま何度だからここがピント位置のはず!」って感じのものがありました。う~ん、これだと上記の2.しか対応できません。しかも、温度センサーと高精度な位置決めができるモーターかマイクロメータとの合わせ技が必要でお金がかかりそうです。実際、既製品は高価ですしね。さりとて、他の方法は思いつきません。

そんなある日、自分のピント調整を思い返してみました。大まかな調整は赤道儀のアライメント時に明るい星のスパイダー回折像を使い、微調整は構図を決めてから画面の四隅の星像を使います。私の機材の光学系は非点収差が残っていまして、ピントが少しずれると四隅の星が円周方向に伸びたり、鉛直方向に伸びたりします。これが丸くなるようにしていました。下図はピント調整の概念図です。

AstiMethod

いわゆる非点収差法ですね。CDとかDVDのレーザーピックアップのピント調整に使われている割とよく知られた方法ですが、点像が必要なので用途が限られます。ただ、天体写真は点像には困らないので、相性のいい方法だと思います。単純な手法の割に精度は良く、ニュートン式望遠鏡のスパイダー回折像を見てもよく分からないようなピントずれもしっかりとらえられます。

うむ、これだ。これをパソコンにやらせれば、撮影中のオートフォーカスができるぞ!

この方法の利点は1枚画像で内ピンか外ピンかを判定できることです。逆に欠点は大きくピントが外れているとピント判定ができないことです。従って、大まかなピント調整は従来通り手動で行い、微調整のみオートフォーカスすることにします。

ピント判定は撮影画像そのものを使います。現在運用中のソフトウェアによるたわみ補正は、撮影した画像を取り込む仕組みを持っていますので、これにピント調整機能も乗せることにしました。今回作ったソフトは、読み込んだFITSファイルから四隅の星を選んでピントずれを監視し、ずれていたらForcusPalのForwardかReverseボタンをクリックするというものです。

Tawami

あ、4番だけピントがずれている。スケアリング不良がバレバレですね・・・。(これを契機にスケアリングを調整しました。少し緩和した程度ですが・・・)

click

FocusPalのボタンをクリックするため、その座標とマウスボタンを押す時間設定を付けます。また、微小なずれなら調整しないための最小値も設定します。このソフトは、流れちゃって楕円になったのか、ピントずれで楕円になったのかを判定し、ピントずれのときだけクリックするようにしています。下記のように楕円の向きがみんな同じ方向なら流れたと判定し、円周方向か鉛直方向ならピントずれと判定します。円周方向か鉛直方向かと、内ピンか外ピンかの関係は機種依存があると思うので、下記は判定の概念です。

pint_jdg

下記は試運転の様子です。FocusPalで200msモーターを動かしてピントを外した状態で撮影を開始し、3枚目にはピントが元に戻りました。上段は中心像(DDP済)、中段は明るい星のスパイク像、下段は画面右下の非点収差が見えている星です。

pint

一応、動きましたので、基本的なロジックは合っていそうです。あとは安定動作のためにピントか流れかの誤判定を少なくするとか、判定に使用する星を選ぶ基準などの調整を行おうと思います。

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