ガイド鏡を使ったガイドの場合、安定してガイド星を追尾しているのにタワミによって流れてしまうことがあります。普通はタワミを少なくするために、鏡筒・接眼部・ガイドマウントなどを補強しますよね。でも私は機械工作が苦手です。補強のために穴あけ加工とかをやっても失敗したり、効果が出なかったりしそうなので怖くて手を付けられません。
そこで、機械工作以外の方法でタワミに対処することが出来ないか? を考えることにしました。それが掲題の「ソフトウェアによるタワミ補正」です。
タワミ補正には撮影鏡で撮影した画像を使うことにしました。タワミが発生している場合、1枚目と2枚目は星が少しズレて写ります。このズレの方向と量を測定して、タワミを追いかけるように同じ方向にガイドすればタワミをキャンセルできるだろうという考えです。経験上、だいたい同じ方向にじわじわズレて行くので、3枚目も同じようにズレると仮定して、1枚当たりの露光時間をかけて同方向にオートガイドの重心をずらしていきます。撮影画像が5分露光なら、5分かけてガイドをずらします。
毎回同じようにたわむとは限らないので、完全にタワミをキャンセルすることは出来ません。でも、ステライメージのカスタムフィルタやガイドエラー補正によって容易に補正できる程度に抑え込むことは出来ました。
下の図は自作したタワミを検出するソフトのスクリーンショットです。1枚目の画像と2枚目の画像の星のズレを検出しています。このズレ量をオートガイドソフトに送ります。また、最新画像と1つ前の画像のファイルの時刻の差から撮影間隔を計算して、これもオートガイドソフトに送ります。3枚目が撮影されたら、1枚目と3枚目を比較してズレ量を計算します。何枚撮影しても目標の位置は1枚目の星にすることで、何時間撮影してもほぼ同じ位置に写るようにしています。
オートガイドソフトは、ズレ量と撮影間隔を受け取り、タワミをキャンセルする方向に少しずつオートガイドにオフセットをかけます。下の図は、自作したオートガイドソフトのスクリーンショットです。ちょっと見にくいですが、この時点では0.3ピクセルくらいガイド星の重心をずらしてガイドしています。
上の2つの図は、別の日にキャプチャしたものなのでズレ量の値 (デルタ) が違っています。ま、動作原理の説明には何とか使えるかと。。
下の写真は、5分 × 11枚の画像を位置合わせ無しで加算平均したもので、左がタワミ補正無し、右がタワミ補正有りです。こんな感じにタワミによるズレを小さくできました。右の画像は普通に位置合わせして加算平均すれば、星像はしっかり丸くなります。
今回は自分の今の機材専用にパラメータを決め打ちして作ったので比較的簡単にできました。パラメータは、FITSファイルのフォーマット、撮影カメラのFOVpp、ガイドカメラのFOVpp、撮影カメラとガイドカメラの縦横の位置関係、補正率などです。